「奥の菊道」俳句会
令和6年7月31日締め切り分 応募句より 井芹眞一郎 選
一席 船音に寝付かれぬ旅明易し 熊本市 稲田 夏子
(評)港の近くに旅の宿をとった夜。窓際を通る舟の音が気がかりで眠れない
一夜を過ごす作者。うとうとしている間に夜明けが来てしまった。
二席 返信の宛先は森落し文 千葉県 中宮 順子
(評)木の葉が筒状に巻かれて中に卵を産み付ける。それが落ちていたりする
のを落し文という。森の中で見つけたので宛先は森になっていたと云う
詩心を働かせた一句。発想がユニーク。
三席 点描の線となりゆく田植えかな 福岡県 鹿子生憲二
(評)田植の始終を見ている作者。バラバラに植えられているように見えて、
次第に列が生まれて来る。田植の雰囲気が描けている。
入 選
金色の風のうねりや麦の秋 菊池市 宮本 敏子
命あるごと空蝉の爪の先 合志市 坂田 美代子
熱き茶の一服うまし梅雨晴間 熊本市 松田 留以子
鬼灯の色づき初めし庭の隅 熊本市 田中 悦子
蝸牛どこから来たか道たどる 熊本市 西本 丈正
風の音水の音する夏館 熊本市 石橋 みどり
ローン背にあと二十年蝸牛 熊本市 貴田 雄介
夕立晴庭木いきいきしてきたる 熊本市 中野 しずこ
あぢさゐやわが悲しみの解る花 熊本市 竹野 政子
唐黍の葉ずれの音を聞く夕べ 熊本市 真野 幸子
霾るや沈む夕日のこがね色 阿蘇郡 山本 小夜子
朱塗り箸梅雨の朝餉に彩添えて 熊本市 南 幸子
中干しの稲強くあれ我もまた 御船町 田中 眞知子
梅雨待つと追伸多き便りかな 山鹿市 本田 孝子
「奥の菊道」俳句コンテストは
これから少しずつ消えていってしまうかもしれない
美しい自然の風景や懐かしい生活が残る
熊本県内の故郷の情景を俳句に詠んでいただき
その俳句を広くご紹介していくことで
大切なことを見失ってしまった現代の日本社会への
故郷からの最後のメッセージを伝えていくことを
目的とした俳句コンテストです。
熊本県内の故郷に吟行いただき、そこで詠まれた皆様の俳句を
「奥の菊道」俳句コンテストにご応募ください。
このホームページの「心の旅」に掲載されている俳句は
過去12回の「奥の菊道」俳句コンテストの入賞作品と
上記の「奥の菊道」俳句会の優秀作品です。
一句一句の俳句を読み進めていただければ、
素敵な心の旅のお時間になることでしょう。